悪女は果てない愛に抱かれる

さっきから「え?」しか発声してない気がする。

失われた語彙を取り戻そうと頑張るけれど、どこまでいっても「え?」しか出てこない。


遥世くんって、こんなこと言うキャラだっけ……。


からかわれただけ……だよね。

でも、格好は派手だけどチャラそうには見えないし……。



なんて、考えていたとき。


部屋の扉がガチャリと開いて、危うく息が止まりかけた。



「あ〜、ふたりやっぱりここにいたんだ」



現れたのは楓くん。

上半身、ハダ…………──



「ここにいたんだ〜じゃねえよ。さっさと服着ろ! そのフェロモン撒き散らすのはまじでコーゼンワイセツ」



つかつかと遥世くんが歩み寄って行く。

なんだかさっきまでより治安が悪い。



「ごめんごめん。最近集まりなかったし、遥世くんたちが来るとは思わなかったんだよね〜。あ、あゆちゃん久しぶり〜」



とろけるほど甘い笑顔。

さらっと揺れる淡いブルーの髪。

今日も美しさは健在……。

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