悪女は果てない愛に抱かれる
わたしの隣で、楓くんがのんびりとシャツのボタンを留めている。
「楓くん制服なんだね。学校には来てたの?」
「んーん。昼から行こうとしてたんだけど、通学路でお姉さんに声掛けられたからそのままここに来たって感じだよ〜」
「あはは……なるほどお。相変わらずモテモテだね」
「あ。あゆちゃんは警戒しなくても大丈夫だよ。オレね、ルリの友達にだけは絶対に手を出さないって決めてるんだ」
ボタンを留め終えて、にこっと笑顔を向けられた。
いつものフェロモン全開の笑顔じゃなくて、どこか慈しむような優しさが溢れているように見えた。
「ルリちゃんのこと、すごく大事にしてるんだね」
「そー。楓くんて実はヤバいほどシスコンだから」
会話に割り込んできたのは遥世くん。
対する楓くんはくすくす笑う。
「そうだね。ルリがあゆちゃんを大好きだから、オレもあゆちゃんのことが大好きだし、同じくらい大事に想ってるよ」