悪女は果てない愛に抱かれる
──バクン!と心臓が跳ねた。
危うくティーカップを落としそうになる。
楓くんの微笑みが急に意味深に感じた。
「ない。観月に限って」
遥世くんが即座に否定した。
「そうかなあ?」
「あいつは酸いも甘いもとっくに噛み分けてる。今さら金にも女にも興味ないよ」
「あは、たしかに〜」
あっさり納得した楓くんにホッとする裏で、別の不安もせり上がってくる。
観月くんと長年一緒にいる人がこう言うんだかは、やはり普段から遊んでいるわけではなさそう。
だったら、どうしてわたしにあんなこと……。