悪女は果てない愛に抱かれる
たった今眺めていた景色の中の、何の変哲もないビルをルリちゃんが指差すものだから、いったん頭がフリーズする。
……着いた?
ここは旧橘通りと呼ばれる区域で、現在はゴーストタウンと呼ばれてもおかしくないほど閑散としていて。
その一角、彼女が示すのは、やはりただのビルだ。
なにか特徴を挙げるとすれば他よりも高さがあるだけで、マンションやアパートといった住居が入っている建物にはとても見えない。
「ここがルリちゃんのお家、なの?」
「ん~、そうだね。第二の家と言っても過言じゃないかな」
「第二の家……」
「外観は地味だけど、中は超~お金かけて改築してあるから立派なものだよ!」
ほらほら!と楽しげに促され、返事をする間もなくエントランス足を踏み入れた──────直後。
視界に飛び込んできた光景に思わず絶句する。