悪女は果てない愛に抱かれる
「っ、冷たい……」
いけない。
考え込んでいたせいで避けきれなかった。
というか、いったい何事……っ!?
顔をあげたときだった。
「やばい殺される!」
「強盗だ! 誰か通報して!!」
そんな叫びとともに、中にいた人がみんな勢いよく外へ飛び出していく。
ゴートー……強盗!?
急いでレジ近くに目を向けると、マスクを被った男がナイフのようなものを振り回していた。
刃渡り15センチ以上はありそうだ。
大きめのをナイフを選んだのは、おそらく、見かけで恐怖を与えるため。
武器としてのナイフの扱いにはあまり慣れてないみたいだけど……
ハッタリだとも言い切れない。
「殺されたくなかったら有り金全部用意しろ!!」
店員さんの顔が真っ青に染まっている。
「なに突っ立ってるの! あなたも早く逃げなさい!」
そばにいたお姉さんに声をかけられた。