悪女は果てない愛に抱かれる
たしかに……逃げたほうがいいかもしれない。
でも、店員さんはもうバッグにお金を詰め始めている。
誰かが通報していたとしても、警察が来るのを待っていたら絶対に間に合わない。
どう、しよう……。
ナイフを向けられたときの防衛方法は身につけているつもりだけど、実践経験はゼロ。
唇を噛んだまま、時間だけが過ぎていく。
「おら、そこの女退け!!」
お金をすべて詰め終えたらしく、ついに、男がこちらに向かって走ってきた。
勢いに圧されて、つい道を空けてしまう。
だけど、男がコンビニの扉を出た直後、わたしはとっさに地面を蹴った。
この距離ならまだ追いつける……っ。
10メートル、5メートル、3メートル……。
相手の腕を掴み、ぐいっとこちら側に引き寄せた。
抵抗する隙をついて足を払い、そのまま勢いよく地面に押しつける。
「ぐ、…は…っ……」
取り押さえたはいいけれど、片腕を拘束しきれなかった。
よりによって、ナイフを持っている方。