悪女は果てない愛に抱かれる


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酷くも優しくもない力で引き上げられ、わたしはなんとか地面に立った。


何も言葉が出てこない。

この状況にふさわしい言葉なんて、なにひとつない気がする。


観月くんがわたしの手をとって、路地裏に誘導する。


わたしはその手に引かれるまま、足を前に出すことしかできない。



バレていた。

わたしが安哉くんの妹だってこと。


逃げ出したいけれど、そんな気力もない。


緩い力で繋がれた手。

振りほどこうと思えば簡単に振りほどけそう。

簡単に振りほどけそうなのに、ちっとも離れられる気がしない。


まるで見えない手錠をかけられているみたいだった。


どこに向かっているんだろう。

わたしは今から、この人にどんな罰を与えられるんだろう……。



現実味のない……現実。
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