悪女は果てない愛に抱かれる


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「観月さん、お疲れ様です。その女はいったい……」

「今夜空いてる部屋を調べろ」

「はっ。少々お待ちください」



気づいたときには、ホテルのロビーにいた。

それも巷で有名な高級ホテルだ。


どうしてこんなところに連れて来られたのかさっぱりわからず。
驚きのあまり涙も止まってしまった。


ロビーにいる人たちが、珍しいものを見るような目でじろじろとわたしを見ている。


……それもそのはず。


このホテルに泊まることができるのは、富裕層の中でもさらにトップクラスのお金持ちだけ。


パーティドレスなどの華やかな装いの女性たちが集う中で、制服姿のわたしは明らかに浮いている。

しかも、すっかり忘れていたけれど、その制服はコンビニでぶちまけられたアイスコーヒーと、ナイフで切りつけられたときの血で染まっているのだ。



「お待たせ致しました。週末なのもあり今夜は空きがほとんどなく……最上階のVIPルームでよければご案内できますが、いかがでしょうか」
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