悪女は果てない愛に抱かれる

観月くんとフロントスタッフさんが話している内容も、何も頭に入ってこない。

やがて観月くんに手を引かれ、びくっと肩があがった。



「ほら、早くこっち来な」


「き、来なって……え? ここ、高級ホテルで……わたしどう考えても場違いだし……、だってこんな格好で……、みんな綺麗なドレスなのに」


「そうだな。でもお前みたいな悪女にはこの汚れたドレスがお似合いだよ」

「っ、……───」



“悪女”という二文字がぐさりと胸を刺して。

あっけなく涙が零れた。


観月くんにそう思われていること。

わかっていたつもりだけど、実際に言われると想像以上に辛かった。


とっさに俯いて顔を隠す。



「泣くな。部屋に着いたらすぐに脱がしてやる」


そんな声と同時に、肩にふわりと上着が掛けられ。


余計に涙が出た。


蔑まれることより、罵られることより、優しさを見せられることのほうが……今はずっと苦しい。

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