悪女は果てない愛に抱かれる
ワインレッドのカーペットが敷かれた先には左右に跨る大理石の階段があり、
踊り場にはアンティーク調の鏡や絵画が飾られ、天井にはシャンデリアが吊るされ。
そこはルリちゃんの言う通り、外観からは想像もつかない、異国の宮殿を思わせるきらびやかな空間だった。
おとぎ話の世界に迷い込んだんじゃないかと。
ひょっとするとこれは夢の中なんじゃないかと。
ゆっくりと瞬きをして、視点を手前へと戻した。
そのとき、さっきまでなかったはずの人影が急に現れ、びく!と肩が上がった。
「──おまえ誰」
彼は、熱のこもらない目でわたしを一瞥した。
すぐに逸らさたけれど、それまでの間、わたしは息ができなかった。
時間が止まったみたいだった。
体が石にされたみたいだった。
そうだ、ギリシャ神話で、こういう怪物いなかったっけ。
見た人を石に変える力を持つ怪物。
ええと、たしか名前は………──。