悪女は果てない愛に抱かれる
「………」
「まあ……帰す気ないけど」
そんな声と同時、さらに下のボタンまで外されてしまった。
羞恥と戸惑いで目眩がする。
「……観月くん……あの、」
「男を騙しておいて、まさかただで帰してもらえるとでも思ったか?」
刹那、野性的な瞳に呑み込まれた。
わかってる。
橘家の息子に手を出したんだ。
正体がバレたからには、相応の罰を受ける覚悟はある。
たとえ好きだと伝えたところで、信じてもらえない。
わたしは桜家の娘で、観月くんは橘家の息子だから。
どうせ叶わいない恋なら
このまま、嫌われたほうがいい。
観月くんがわたしを“悪女”と呼ぶなら
最後までその役を演じてみせる───。