悪女は果てない愛に抱かれる


.



「……んっ……は、ぁっ」


浴室に荒い息遣いが響く。


激しいキスに、少しでも気を抜けば足元から崩れ落ちてしまいそうだった。


わたしを憎んでいるはずなのに。
これは制裁のはずなのに。

どうしてキスなんか……。


そんな疑問もすぐに熱で打ち消されていく。


上から流れるシャワーがわたしたちを濡らしていく。


体を隠すために巻いていたバスタオルは半分以上ずれ落ちて、もう意味をなしていない。


水が傷口に染みて思わず身をよじると、観月くんはそこに優しく唇を落とした。



「やぁ……っ」

「……この程度の傷で済んでよかった、」


なにか言われた気がするけれど、シャワーの音にかき消されて聞きとれなかった。

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