悪女は果てない愛に抱かれる

好きな人の前で肌を晒して、触れられて。

……とんだ拷問だ。


それなのに、その唇も指先もどこか優しくて戸惑う。


「あゆあ……もっかい」

「ん、んぅ……っ」


再び唇が奪われた。


名前……呼ばないで。

キスなんかしないで。

優しく触れないで。


ちゃんと嫌いになれるように、傷つけて……。



浴室の熱気に当てられて、ついにがくんと力が抜けたわたしの体を、観月くんが抱え上げた。


一時の浮遊感ののち、広いベッドに下ろされる。


光を闇を同時に纏う瞳がわたしを見下ろしてくる。

その中にとっくの昔に囚われているわたしは、決して自ら視線を逸らすことができない。



やがて目の前に影が落ちた。


唇、首筋、肩、胸元……。

キスが順番に施されていく。


それと同時に、指先がわたしの弱い部分を探るように動くから。

びくっと肌が反応するのを止められない。

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