悪女は果てない愛に抱かれる
檻か、鎖か


.



目が覚めたとき、観月くんの姿はなかった。


代わりに、ベッドには綺麗になったわたしの制服と。


その横にレースのワンピース、それから上品なデザインのミュールが無造作に置かれていた。



「すごい、高そうな服……」


きっと、わたしがホテルを出るときに恥ずかしくないように用意してくれたんだ。

制服も、いつのまにランドリーサービスに出してくれたんだろう……。



そのときは起きたばかりで頭も回らず。

甘い気だるさに支配されながら、まだ夢見心地だった。


だけど、枕元のスマホが目に入った瞬間、意識がはっと覚醒する。



──【 父さんから呼び出しがあった。大事な話があるらしい 】

──【 今すぐ家に帰ってきて 】



安哉くんからのメッセージが頭をよぎり、スマホを手に取る。


不在着信が……十件……二十件……いや、それ以上。



「……っ!」

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