悪女は果てない愛に抱かれる
急いで折り返しをタップする。
ワンコール目が鳴り終わる前に、安哉くんが出た。
『お前何してたんだよ!!』
一発目から罵声を浴びせられる。
「ご、めん……ちょっと、色々あって」
『はあ!? ……いや、まあいい、とにかく無事なんだな、心配させんなよ……』
「うん、本当にごめん……! それで、お父さんの話って……」
おそるおそる尋ねる。
返事が来るまで、やけに間があった。
『この前、間交差点で事故があっただろ』
嫌な予感がして、返事が出なかった。
『あのとき巻き込まれた車の一台に、うちの役員が乗ってたんだよ。しかもあの事故の主犯が橘家の関係者って情報が入ってきて、上層部ががちでカンカンに怒っててさ』
「……えっ? 待って、あの事故って、バイクの男性が橘の元構成員で、橘はその人を追ってたって聞いたよ。うちの組織を狙ったわけじゃないんじゃ……」