悪女は果てない愛に抱かれる

『ああ、うちの役員は偶然巻き込まれただけだ。けど、うちの連中はそんなの関係なく報復に出ようとしてる。橘を攻撃するきっかけさえできればなんでもいいんだ』


お前も知ってるだろ、と安哉くんが付け加えた。



『つーか、お前なんで事故の詳細知ってるんだよ』

「……っ。それは……」


『まあいい、詳しい話はあとで聞く。お前、今からうちの第一倉庫にこれるか?』

「え、うん……。ちょっと時間は掛かりそうだけど、一時間以内には」



そう返事しながらも、背中には冷たい汗が伝っていた。


わたしが生まれてからというもの、両家はずっと冷戦状態が続いていたのに。

よりにもよって、こんなタイミングで抗争が勃発しようとしてるなんて……。



『一時間か……。わかった。でもなるべく急げよ。今朝、父さんの命令で橘の役員の娘を拐ってきたんだ。たしか……ルリって名前の』


「──……え?」


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