悪女は果てない愛に抱かれる

……“メデューサ“。

その名前が頭に浮かんだと同時、ハッと現実に返る。


いけない、ちゃんと挨拶しないと……!



──『今日はお兄ちゃんもいるから、あゆ先輩に紹介するね!』


ルリちゃんはたしかそう言っていた。

ということは、この人はきっとルリちゃんのお兄さんだ。



「あのっ、わたし、」

「──えっ、観月さん!? 今日来てたんですかっ!?」



彼に向けた言葉は、ルリちゃんの声にかき消された。


………“ミヅキ、さん”………?


またもや時間が止まったかのような錯覚に陥る。

だけど、心臓だけは激しく脈を打ち続ける。

これは現実だと、嫌でも教えてくる。



わたしの人生に、派手なイベントなんて

起こるわけがない


んじゃ、なかったのですか───神様。

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