悪女は果てない愛に抱かれる


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駅に向かって走る途中で、車から追い越し際にクラクションを鳴らされた。

かと思えば、その車がわたしの前で停車し、思わず足を止める。



「今井あゆあチャンだよね、乗って!」


その顔を見て、息を呑んだ。


間交差点の事故の日、わたしを乗せてくれた運転席さん──もとい、遥世くんのお兄さん。


思わず後ずさってしまった。


わたしが安哉くんの妹だと確信したのは、この人の報告がきっかけだったと観月くんが言っていた。


つまり、この人も、わたしが桜家の娘だって知っていることになる。



「大丈夫。僕は君の敵でも味方でもない。観月くんには“個人的に”雇われていただけだからね」


わたしの思考を読んだような返事に、一瞬戸惑った。

でも、遥世くんに似た真っ直ぐな瞳は、わたしを騙しているようには見えず。

促されるまま、助手席に乗り込んだ。

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