悪女は果てない愛に抱かれる

車は間もなく発進した。



「あの……個人的に雇われていたってどういうことですか?」

「そのままの意味だよ。僕はとうの昔に佐藤家を勘当されてる身でね。今は個人でタクシー事業と、それから裏では情報屋をやってるんだ」


「そうだったんですか……」

「そう。橘家に仕えているわけではないから、あゆあチャンが桜家の娘さんだったとしても、僕にはなんの関係もないんだよ」



そのまま話を聞けば、今朝、観月くんから、わたしをホテルから家まで送ってほしいという個人的な依頼があったらしい。


わたしが桜家の娘だと知っているのに、どうしてそこまでしてくれるのか。

昨日からわからないことばかり。


だけど、遥世くんのお兄さんのことはひとまず信用できそう……。



「あの、そしたらお願いがあるんですけど……」


意を決して声を掛けた。



「桜通連合の第一倉庫に向かってくれませんか? 住所は……──」

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