悪女は果てない愛に抱かれる


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なるべく気配を殺して歩きながら、空調室横の空き部屋の手前まで移動した。

そこの扉の前には、案の定、ふたりの男性が立っていた。


手前にふたり、……おそらくら中にはもうひとり。


わたしは思い切り地面を蹴って、すばやくふたりの背後に回った。



「え? なんだ今の……」


ごめんなさい!と心の中で謝りながら勢いよく手刀を振り下ろした。


ふたりが同時に倒れたのを確認して、扉を開ける。


見張りがまだいるかもしれないと構えたけれど、中にいたのはルリちゃんだけ。



「ルリちゃん……っ」

「……───え、あゆ先輩……?」



疲弊しきった表情に、ずきっと胸がいたんだ。



「あゆ先輩、なんでここに……」

「説明はあと、こっち来て!」


すばやくロープをほどいて、ルリちゃんの腕を引く。


裏口までの廊下を必死に走った。

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