悪女は果てない愛に抱かれる
決して長い距離ではないのに、扉にたどり着くまでが永遠にも思えた。
「ルリちゃん、ここを出たら左にまっすぐ進んで。そこに遥世くんのお兄さんの車が待ってくれてるから」
「え? でも……」
「あんまり時間がないの、お願い!」
「っ、あゆ先輩も一緒に逃げようよ」
ルリちゃんは、どうしてわたしがここにいるのか、あまりよくわかっていないみたいだった。
「ごめん、できない……。わたしは……」
続きを言うことはできなかった。
ルリちゃんの背中をそっと押して、振り切るように扉を閉める。
「はあっ、……は……あ」
よかった。
ルリちゃんを逃がすこと、できて……。
張り詰めていた緊張の糸が解けて、廊下の壁に寄りかかるようにしてずるずると倒れ込む。
間もなくして、険悪な顔をした男の人たちがわたしの周りを取り囲んだ。