悪女は果てない愛に抱かれる
扉のところに観月くんが立っている。
幻覚……じゃ、ない。
「入り口に見張りがいなかったら入ったらこのザマ……。お前、なに他の男にやられようとしてんの」
昨日と同じ瞳でわたしを見下ろしてくる。
「お前ならこの程度の男ども蹴散らせるだろ。それとも、こうやって迫ってくる男なら誰でも喜んで受け入れるような女だったのか」
その声に、心臓がドク、と反応した。
「違う……観月くんだけ……っ」
そう叫んだ瞬間、ようやく自分を取り戻した気がした。
「は?ミヅキ……」
「って、まさか橘の……」
周りにいた人たちがざわめき始める。
動揺からかわたしを拘束する力が少しだけ緩んだのがわかり、その腕を勢いよくふりほどいた。
「くそ、この女……!」
すかさず掴みかかってきた相手をかわして、観月くんの胸に勢いよく飛び込んだ。
──そのとき。
「おい、なんの騒ぎだ!?」