悪女は果てない愛に抱かれる

水を打ったように場が静まり返った。


観月くんは状況を理解したのか、わたしの腰を抱くと、丁寧にキスに応えてくれた。


最初から最後まで、すべて偽り……。


離れる寸前、少しだけ涙が出た。



男の人たちがまた襲い掛かってくるんじゃないかと思ったけれど、

みんな、呆気にとられたようにわたしたちを見つめていた。



あゆ……、と。

安哉くんの唇が、小さく動いたのがわかり。

同時に、観月くんが安哉くんの前に立って、なにかを耳打ちした。


「お前の妹は橘通連合で預かる。桜が再び抗争を仕掛けてきた場合妹の命はないと……お前の父親にもそう伝えておけ」


いったいなにを言ったのか。

再びわたしに向き直った観月くんを見上げた瞬間、手を引かれた。



部屋を出てみんなの視線から逃れた瞬間、その手に容赦ない力が加わった。



ぐいぐいと乱暴に引っ張ぱられ、前のめりに転げそうになりながらついていった先には、黒塗りの車。

扉が開いたかと思えば、どんっ、と中へ押し込まれた。


< 194 / 197 >

この作品をシェア

pagetop