悪女は果てない愛に抱かれる
水を打ったように場が静まり返った。
観月くんは状況を理解したのか、わたしの腰を抱くと、丁寧にキスに応えてくれた。
最初から最後まで、すべて偽り……。
離れる寸前、少しだけ涙が出た。
男の人たちがまた襲い掛かってくるんじゃないかと思ったけれど、
みんな、呆気にとられたようにわたしたちを見つめていた。
あゆ……、と。
安哉くんの唇が、小さく動いたのがわかり。
同時に、観月くんが安哉くんの前に立って、なにかを耳打ちした。
「お前の妹は橘通連合で預かる。桜が再び抗争を仕掛けてきた場合妹の命はないと……お前の父親にもそう伝えておけ」
いったいなにを言ったのか。
再びわたしに向き直った観月くんを見上げた瞬間、手を引かれた。
部屋を出てみんなの視線から逃れた瞬間、その手に容赦ない力が加わった。
ぐいぐいと乱暴に引っ張ぱられ、前のめりに転げそうになりながらついていった先には、黒塗りの車。
扉が開いたかと思えば、どんっ、と中へ押し込まれた。