悪女は果てない愛に抱かれる

……いやいや。

ミヅキって名前の男の子なんて、全国にウン万人いるだろうし。

もしくは、わたしが名前を聞き間違えたのかもしれないし。


そうだよ。
だってルリちゃん、至って穏やかな表情でわたしの向かいに座ってるもん。


さっきの人が橘家のご令息であり不良組織・橘通連合のヘッドである橘観月なら、
こうやってのほほんとお茶会を開く前になにか説明があるはず。

だから大丈夫。安心してケーキを食べよう──と、自分に言い聞かせた矢先。



「わ〜お珍しいね、ルリがお客さん連れてくるなんて」


部屋の扉が開き、男の人が現れた。

さらにもうひとり、彼の後ろから顔を覗かせたので、またもや体が硬直する。


「お兄ちゃん! 遥世(はるせ)くん! おかえりなさーい!」


──オニイチャン、ハルセクン。

どうやら新キャラご登場のようだ。
< 20 / 197 >

この作品をシェア

pagetop