悪女は果てない愛に抱かれる
そう尋ねたのは、ルリちゃんのお兄さんである楓くん。
対するルリちゃんは、うぐっ、といった感じで身を縮こめた。
「だって……。橘通連合の名前出したら、あゆ先輩怖がって来てくれないかもって思ったんだもん……」
ドカン!と必殺の一撃を食らう。
「………たちばな、どおり、れんごう………」
こういったピンチのときに、いかに冷静でいられるかが大事だって、昔から安哉くんが言ってた。
目を大きく見開いてはけないし、声を上ずらせてはいけないし、手を口元にもっていってはだめだし。
ソファからはみ出るくらいに大きく体を仰け反らせるなんて、とんでもないことで。
だから……たった今、それらすべての行動をコンプリートしてしまったわたしは本当に愚か者なのです。
「ほらあ! やっぱりびっくりさせちゃったじゃん!!」
ルリちゃんが楓くんを睨む。
大丈夫。まだ立て直せる。
「と、取り乱してごめんなさい。まさかみなさんがあの有名な橘通連合のメンバーだなんて想像もしてなかったので……!」