悪女は果てない愛に抱かれる
橘通連合の本部に来てしまった挙句、まさか、メンバーのひとりがクラスメイトだったなんて。
しかも、この建物に出入りしているということはおそらく幹部クラスだ。
わたしの正体が一番バレてはいけない人たち……────。
「あのっ……、ちょっと、お手洗いを借りてもいいかな?」
血の気が引いてしまう前に、気を落ち着ける場所へいったん逃れることにする。
「そこの扉出て右の突き当りだよ~。あたしも一緒に行こっか?」
「ううんっ、大丈夫。ありがとう」
挙動不審にならないように、最後まで細心の注意を払った。
後ろ手で扉を閉めれば、長い溜め息がはあーっと零れる。
扉を閉めたことで彼らの視線から完全に逃れたと、油断していた。
「──お前、さっきルリが連れてきた女か」
ふと、目の前に影が落ちて──ドクリ、心臓がいやな音を立てる。