悪女は果てない愛に抱かれる

橘通連合の本部に来てしまった挙句、まさか、メンバーのひとりがクラスメイトだったなんて。

しかも、この建物に出入りしているということはおそらく幹部クラスだ。


わたしの正体が一番バレてはいけない人たち……────。



「あのっ……、ちょっと、お手洗いを借りてもいいかな?」



血の気が引いてしまう前に、気を落ち着ける場所へいったん逃れることにする。



「そこの扉出て右の突き当りだよ~。あたしも一緒に行こっか?」

「ううんっ、大丈夫。ありがとう」


挙動不審にならないように、最後まで細心の注意を払った。


後ろ手で扉を閉めれば、長い溜め息がはあーっと零れる。

扉を閉めたことで彼らの視線から完全に逃れたと、油断していた。




「──お前、さっきルリが連れてきた女か」


ふと、目の前に影が落ちて──ドクリ、心臓がいやな音を立てる。

< 28 / 197 >

この作品をシェア

pagetop