悪女は果てない愛に抱かれる
それをよしとして、部屋に戻ったあとのことを考えよう。
まずは、いち早くここを立ち去ることだ。
皆様方の記憶になるべく残らないように当たり障りのない振る舞いと会話を心がけよう。
3日後には、今井あゆあではなくモブZくらいの認識でしかなくなるように。
同じクラスの遥世くんの存在は……かなり厄介だけど、彼への対応は改めて考えるとして。
──この世で一番存在感のないモブを演じられますように。
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「それでねっ、次の瞬間あゆ先輩の足がその男の顔面を直撃したの!! やばいくらいキレイにキマって、男は半泣きで逃げてったの!!」
胃を痛くしながら戻ると、皆さん、なにやらたいそう盛り上がっておいでだった。
……半泣きで逃げたいのはわたしのほうだ。
ルリちゃんに口止めをお願いしとくんだった……っ。
「あゆちゃんすごいね〜、その可愛くて細い体のどこにそんな力が隠れてるんだろう?」
楓くんが甘〜い笑顔でそう言った。
ていうか、知らぬ間に“あゆちゃん”呼びになってるし。
モブZ作戦……始まる前から大失敗の予感。