悪女は果てない愛に抱かれる
しかも、部屋には先ほどのメンツに加えて観月くんもいた。
みんなから少し離れたテーブルで、ひとり紅茶をすすりながら何やら資料のようなものを読んでいる。
「あのときはっ、よ……避けようとしたらたまたま足が相手に当たっただけで、ですね」
「んーん! あれは絶対熟練者の技だったよ! 回し蹴りってやつかな!?」
「え……うう……、そんな技やってないよ、見間違いだよお」
「絶対嘘! あゆ先輩、なんか武道系習ってるでしょ!」
ルリちゃん……お願いだからその口を閉じて……。
儚い願いは届くわけもなく。
それでもわたしは、苦しくても最後までシラを切り通すしかないのだ。
「ほ、ほんとに、気づいたら足が当たってた感じなの……!」