悪女は果てない愛に抱かれる

「うっ……ごほ、実はさっきそこの廊下でお会いしてご挨拶したので、大丈夫かなあと」

「ええっ、観月さんそうだったんですか?」


ルリちゃんの声に、観月くんはこちらをチラリとも見ずに「ああ」と返事をした。



「そっか〜。ま、てことで改めてあの人がうちのトップの橘観月さんです!」

「は、はい……」


「観月さんはね〜、会社経営してるから忙しくって学校に全然行けてないの! って言えば聞こえがいいんだけど、本当はお仕事にかまけて学校サボってるだけなんだよ〜、これナイショねっ」

「はえ〜、そうなんだあ」


なるほど。だから誰も橘観月の顔を見たことがないって言われてたんだ。納得。



「まあ、お仕事が忙しいってのもホントなんだけどね。……てゆか、あゆ先輩、あんまり驚かないんだね?」

「え?」


「いや、高校生で会社経営してるって聞いたら普通はもっとリアクションくるかなって」

「……っ!」
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