悪女は果てない愛に抱かれる
つい正直に答えてしまって、後悔した。
彼氏ってことにしとけばよかった。
今すぐ帰る言い訳にできるし。
いや……ここは無理にでも帰らせてもらう。
「ごめん、急用思い出しちゃって、わたしもう帰らなくちゃで……。ケーキごちそうさまでした、すごく美味しかったです!」
紅茶の残りを飲み干して席を立つ。
「やだあ、あゆ先輩もうちょっとだけここにいて!」
「ルリ、わがまま言わない。ね?」
後ろ髪を引かれる思いだけど、楓くんがたしなめてくれたおかげで助かった。
「うう……わかったよお。じゃあ、エントランスまでお見送りするね」
ルリちゃんが立ち上がり、続いて遥世くんも「僕も」と腰を浮かせた。
その矢先。
「待て」
と、気だるい声がふたりを制した。
「その女は俺がエントランスまで送る」
そう言ったのは──観月くん、である。