悪女は果てない愛に抱かれる
「もしもし、今度はいったい何──」
『そっちの学校でバレてないだろうな、お前がおれの妹だって』
スマホから聞こえてきたお決まりのセリフはもう聞き飽きたもいいところ。
「安哉くんて、毎日ソレをわたしに尋ねないと気が済まないの……?」
『ああそうだな。誰かひとりにでもバレたらおれの首が飛ぶしお前は即退学だ』
「……。大丈夫だよ。入学してもう1年以上経つけど、怪しまれたことすらないもん」
『平和ボケしてる奴の言うことは信用に欠ける』
言い返すだけ時間と労力の無駄なので、はいはいとテキトウに相づちを打っておく。
毎度毎度、わたしに意地悪を言うために掛けているとしか思えないよ……。
げんなりして通話を切ろうとすれば、
「いいか、あゆあ。観月って奴にだけは絶対近づくな」
急激にトーンを落とした声でそう言われるので、つい、ぴたりと動作を止めてしまった。