悪女は果てない愛に抱かれる
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おつかいをすっぽかしたことについて、案の定、安哉くんに怒られた。


いつもなら言い訳やら文句やらで反撃するところだけど、今回ばかりはわたしが悪いので素直に謝った。

……正直に言うと、反撃する気力がなかっただけ。


もちろん、橘通連合のことは口が裂けても言えない。

『どこをほっつき歩いてたんだ』という問に対しては、
『課題に使うテキストを学校に忘れたことに途中で気づいて取りに戻った』と嘘をついた。


いつもと違ってわたしがしおらしかったからか、安哉くんはあっさり信じてくれて、お説教も長引かず。


ああ……長い一日だった。

今日のことはシャワーといっしょに洗い流そう、と、お風呂へ向かおうとしたとき。



「あゆ、ちょっと来い」


珍しく家にいたお父さんから声が掛かり、なんとなく嫌な予感がした。

だって、お父さんから話かけてくるのは、“組織”にとって大事なハナシがあるときだから。


だけど、その口から発せられたのは、予想を遥かに上回る

………爆弾のようにとんでもないセリフだった。



「いいか、あゆあ、久々の任務だ。
────橘観月と寝ろ」


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