悪女は果てない愛に抱かれる

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次の日の朝。

思考すら行き詰まりそうなほどぎゅうぎゅうな満員電車の中で、わたしは自身に課された任務について真剣に向き合っていた。



長期戦でいい、という条件がついたことだけは不幸中の幸いかもしれない。


橘観月が表に滅多に顔を出さないと言われているのに加え、わたしは異性との交際経験がゼロ。

おそらくそれを踏まえて、長いスパンで見る計画にしてくれたのだろう……けれど。


成功率が低いとわかっているくせに、さも簡単な任務のように言ってのけるのが、なんとも意地の悪いところ。


それに、“長期戦でいい”を鵜呑みにしすぎるのもよくない。

お父さんは、間違っても気が長いほうではないからだ。


わたしを橘観月に近づけさせるというのは、おそらく数あるオペレーションの中のひとつ──せいぜいプランDとかそのあたり。


あらかじめ見込みの薄い位置付けだったとしても、もしプランA・B・Cが破綻した場合、責任という名のしわ寄せがいっきにわたしにやってくることになる。
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