悪女は果てない愛に抱かれる
「あ、悪い。びっくりさせたか」


隣を見ると、長い前髪に大きな黒縁メガネ、素顔の見えない男の子

──佐藤遥世くんだ。


ええと、髪型もピアスもばちばちな昨日の彼と同一人物だよね……?
そういうハナシだったよね、合ってるよね……?


考えていたそばからご本人登場とは。

ドッドッドッ……と心臓が激しいビートを刻む。


朝から声を掛けてくるなんて、これ、わたしの正体バレてる? バレてない?



「さとー、くん、おはよう」


昨日はお邪魔しましたと続けるべきなのだけど、なるべく触れられたくない出来事なので、喉奥にぐっと留めた。


けれど、その甲斐なく。


「昨日、無事帰れた?」

「あ〜……うん、おかげさまで」


「そー、よかった。……ところで観月にエントランスまで送ってもらってたけど、ふたりでなに話したの」

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