悪女は果てない愛に抱かれる
昇降玄関へ続くロータリーに黒塗りの車が侵入してきたかと思えば、わたしのすぐ横で停車し。
「あゆ先輩ーーっおはよーーっ!!」
そんな声とともに車から何かが飛び出てきて。
勢いよくわたしの胸元にダイブ──
「うぐぇ……っ」
「朝から会えて嬉しいよう〜〜。なんたって、あゆ先輩に会うために早起きして学校に来たんだからね!」
甘える猫みたいにすりすりと顔を寄せてくるのは、まだ記憶に新しすぎる女の子──ルリちゃんである。
その後ろから、気だるい色気を漂わせた男の子が降りてきた。
淡いブルーの髪──ルリちゃんの兄、楓くんである。
そして、周囲からは悲鳴にも似た歓声が沸いた。
「あれルリちゃんじゃね?」
「マジ!?」
「間違いねえ、ルリちゃんだ!!」
「うをーーっ俺のルリちゃんーー!!」
主に男性陣からはそんな声があがり。