悪女は果てない愛に抱かれる

「楓様、ホンモノ!?」
「やばいやばいやばい会えたの奇跡じゃない!?」

「楓様こっち! 目線くださいっ、……きゃああああしぬ!尊いしぬ!」
「兄妹揃って美人すぎる〜〜」


主に女性陣からは、そんな声があがり。


そんな中……。


「ねえ、あのふたりが車から降りてきたってことは、もしかして中に観月様もいるんじゃ……」


一部から聞こえてきた会話に、ドクリと心臓が跳ねる。


「おはよう、ルリちゃん……昨日は、どうも……」


ようやく挨拶を返しながらも、わたしの視線は黒塗り高級車に釘付け。


降りてくるとか……ないよね?



「ねえルリちゃん、あの車って……」

「うん? あれは観月さんが手配してくれたんだよ」


「み、観月く……さんが? へえ〜」

「そう、本当はお兄ちゃんにバイクで送ってもらう予定だったんだけど、お兄ちゃん朝弱くってさあ、まじで使えないのーー」


そうなんだ、楓くんて朝弱いんだね〜と、心ここにあらずな返事が零れた。
< 51 / 197 >

この作品をシェア

pagetop