悪女は果てない愛に抱かれる
「楓様、ホンモノ!?」
「やばいやばいやばい会えたの奇跡じゃない!?」
「楓様こっち! 目線くださいっ、……きゃああああしぬ!尊いしぬ!」
「兄妹揃って美人すぎる〜〜」
主に女性陣からは、そんな声があがり。
そんな中……。
「ねえ、あのふたりが車から降りてきたってことは、もしかして中に観月様もいるんじゃ……」
一部から聞こえてきた会話に、ドクリと心臓が跳ねる。
「おはよう、ルリちゃん……昨日は、どうも……」
ようやく挨拶を返しながらも、わたしの視線は黒塗り高級車に釘付け。
降りてくるとか……ないよね?
「ねえルリちゃん、あの車って……」
「うん? あれは観月さんが手配してくれたんだよ」
「み、観月く……さんが? へえ〜」
「そう、本当はお兄ちゃんにバイクで送ってもらう予定だったんだけど、お兄ちゃん朝弱くってさあ、まじで使えないのーー」
そうなんだ、楓くんて朝弱いんだね〜と、心ここにあらずな返事が零れた。