悪女は果てない愛に抱かれる

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「わたしなんかがお邪魔していい場所じゃないと思うんだよね。だから、遠慮させていただきたくて……ですね」



放課後がもうすぐそこに迫った、午後4時。

終礼が始まる前に遥世くんに今朝のルリちゃんとのやりとりをざっくり話し、

ついでにお断りしたい旨を伝えたのだけど。



「いや……厳しい。ルリの執着心えぐいから」


と、ばっさり切られてしまった。



「そこをなんとか……。ルリちゃんの気持ちは心から嬉しいんだけど、あの場所はどうも身の丈に合わなくて……、わたしは部外者だし」

「まーたしかに、うちの幹部以外は入っちゃいけないってのが本来の決まりではあるけど」


「っ、やっぱりそうでしょ……っ?」

「けど、今井が縮こまる必要はない。ルリが連れて来た客なんだから堂々としてれば」


「……、……」


がっくりうなだれる。

ルリちゃんはたしかに立派な幹部の一員だろうけれど。


わたしは、橘通連合のトップである橘観月から直々に『もうここには来るな』と言われた身。


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