悪女は果てない愛に抱かれる
朝から今までどうするべきか考えに考えた末、わたしが選んだのは
【お父さんに課せられた任務は、とりあえず様子を見る】ということ。
──つまり、一旦保留。
お父さんの命令は絶対であったとしても、観月くんにわたしの正体を怪しまれているかもしれないうちは近づかないほうがいい。
仮にバレたら、観月くんの口から幹部に伝わってきっと酷い目に遭わされる。
橘通連合の影響力は凄まじいから、目にも留まらぬ速さで情報が回って、そのうち全校生徒からいじめられるようになるかも……。
いずれ再び顔を合わせることになるとしても、昨日の今日で観月くんに会うというのは絶対に避けたい。
放課後わたしの教室に迎えに来るというハナシだったから、そのときルリちゃんに直接断ろう。
急用ができたと言えば、わかってくれるはず……。
そう心に決めた、約3分後。
終礼を済ませた担任の先生と入れ替わるようにして、麗しの人物が教室の扉から顔をのぞかせた。
それは、ルリちゃんではなく──。
「あ。あゆちゃんいた。やっほ~」