悪女は果てない愛に抱かれる
「えーっと……。楓くん、お迎えにはルリちゃんが来てくれるって聞いてた気がするんだけど……」
「それがお恥ずかしいハナシ、あの子補習に引っかかって、6時過ぎまで解放してもらえなさそうなんだよね」
「ええっ、補習?」
「うん。だから取り急ぎオレが来たよ」
そっか、補習……。
驚きつつ、内心ほっとしてしまった。
これで断る口実をつくらずに済む。
「そうだったんだね。残念だけど、また機会があればいつか……」
テンプレの社交辞令につくり笑顔を添えて、背を向ける。
背を向け……ようと、した。
「……? ……楓くん、この手はいったい……」
「うん? 今から行くでしょ? オレたちの部屋」
「へ? だってルリちゃんは補習があるんだよね?」
「ルリのことは、あとでまたオレが迎えに行くから大丈夫だよ〜」
「……? ……??」