悪女は果てない愛に抱かれる
「うっ……、痛……はあっ、あゆちゃん、……」
悩ましい吐息でハッと我に返った。
わ、わたし……焦るあまり、つい手が出て……!
慌てて楓くんから離れる。
「ごっ、ごめん!」
痛かっただろうに、楓くんは青ざめるわたしを見てくすくす笑った。
「あぶないあぶない、肩外れるかと思った。どうやら、昨日ナンパ男を蹴り飛ばしたっていうのは本当みたいだね」
「……、……」
「本当、その細い体のどこにそんな力が隠れてるの? 女の子に力でねじ伏せられたのは、さすがに初めてだなあ」
「……ごめ、なさい……」
どう、しよう。
人前でまたやってしまった。
ドン引きされたに違いない。
可愛さの欠片もない、獰猛な女だって……。