悪女は果てない愛に抱かれる
「赤くなったり青くなったり忙しい子だね……そういうの嫌いじゃないよ。むしろ好きかも、可愛くて目を離せない」
「……え、」
一瞬、どきっとしてしまって恥ずかしい。
「心配しなくても大丈夫、オレこう見えて鍛えてるし……。でも、どうしても負い目を感じちゃうなら、オレと一緒に来てくれるよね?」
──甘い笑顔と甘い言葉に、まんまとはめられた。
気づいたときには、首根っこを掴まれて連行されていた。
メモ。楓くんは意外と計算高いし容赦がない……、っと。
そしていつの間に狸寝入りから覚めたのか、遥世くんが一定の距離を保ちながらしれっと後ろをついてきていた。
目が合うと、黒縁メガネの奥でにやりと笑われる。
遥世くんも意外と意地悪だし、橘通連合の幹部は厄介者ぞろいだ。
絶対に敵に回したくない。
後ろにも見張りがいるおかげで抗う術なく。
裏門の近くに停まっていた黒塗り高級車に、わたしは泣く泣く放り込まれたのだった。