悪女は果てない愛に抱かれる
毒か、薬か

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観月くんの視界に収まってから、自分が何秒ほど耐えていたのか、思い出せない。


たった三秒かもしれないし、固まったまま一分くらいは放心していたかもしれない。


頭が『どうしよう』で埋め尽くされ、しだいに熱が及び、やがて情報処理が不能になった。



そして、ぐらりと目眩。

意識が途切れる────。




わたしは昔から、頭を使いすぎるとこうなってしまう。

いわゆる知恵熱というもので、過剰に思い悩んだりすると交感神経が活発になり体温が上昇してしまうらしい。


小学生の頃は、周りの子とは異なる家庭環境によるストレスでよくこれを引き起こしていた。


それだけでなく、宿題でわからない問題に向き合っているだけでも熱を出すことがあったので、
安哉くんは毎度呆れ顔で……。


だけど、『軟弱者』と悪態をつきながらも、氷で冷やしたタオルをせっせと用意してくれてたっけ。


安哉くん、本当は優しいところもあるんだよね。

最近は喧嘩ばっかりだけど……。

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