悪女は果てない愛に抱かれる
「知恵熱?」
「はい……。難しい課題を解いたり究極に思い悩んだりすると、ときどきこうなってしまって」
わたしがそこまで言うと、観月くんは小さく笑った。
「人の顔見ていきなり倒れるとかイイ性格してんなと思ったけど、究極に思い悩んでたのか」
「っ、ええと……! だって、来るなって言われたのに来てしまったし、目が合って、もう終わったと思って……」
「へえ、そう。俺が怖い?」
「こ、……怖……かったです、倒れるまでは」
静かな瞳に見つめられれば、またも操られるように素直な言葉が零れ落ちる。
……そう。ありえないくらい怖かった。はず。
目を合わせたら終わりだと思っていた。はず。
だけど不思議なことに、わたしは今、まっすぐに観月くんの目を見ている。
気づいた瞬間、熱がぶり返したかのように顔が火照るのがわかった。
「そ、そういえば……楓くんや遥世くんは、今どこにいるんですか?」