悪女は果てない愛に抱かれる

なんとなく、目を逸らしながら尋ねた。



「楓はルリの迎え。遥世はバイトがあるとか言って帰った」

「へえ、そうだったんですね……」



楓くんがルリちゃんの補習のお迎えに行ったということは、おそらく今は夕方の6時頃。

となると、2時間近く眠っていたことになる。


わたしは、いつから観月くんとふたりきりだったんだろう。

もしかして、ずっとそばにいてくれてたのかな……?


目を逸らしたのに、熱が引かないどころか鼓動までうるさくなってきた。


額に乗せられていたタオルを、右手でぎゅっと握りしめる。


まだしっかりと冷たさがある。

ついさっき取り替えてくれたとしか、思えないほど……。



「あの……ありがとうございます」

「それさっきも聞いたし、俺はべつに何もしてない」


「でもっ、タオル取り替えてくれたんですよね……?」

「………」


無言。つまりは肯定。

やっぱり、観月くんが替えてくれたんだ……。

< 68 / 197 >

この作品をシェア

pagetop