悪女は果てない愛に抱かれる
なんとなく、目を逸らしながら尋ねた。
「楓はルリの迎え。遥世はバイトがあるとか言って帰った」
「へえ、そうだったんですね……」
楓くんがルリちゃんの補習のお迎えに行ったということは、おそらく今は夕方の6時頃。
となると、2時間近く眠っていたことになる。
わたしは、いつから観月くんとふたりきりだったんだろう。
もしかして、ずっとそばにいてくれてたのかな……?
目を逸らしたのに、熱が引かないどころか鼓動までうるさくなってきた。
額に乗せられていたタオルを、右手でぎゅっと握りしめる。
まだしっかりと冷たさがある。
ついさっき取り替えてくれたとしか、思えないほど……。
「あの……ありがとうございます」
「それさっきも聞いたし、俺はべつに何もしてない」
「でもっ、タオル取り替えてくれたんですよね……?」
「………」
無言。つまりは肯定。
やっぱり、観月くんが替えてくれたんだ……。