悪女は果てない愛に抱かれる
ドクン、と胸の左側が大げさに反応したのと。
──バァン!
と勢いよく部屋の扉が開いたのは、ほぼ同時。
「あゆ先輩〜〜! 補習がんばったよお、疲れたよお、褒めて〜〜」
勢いよく胸に飛び込んできたルリちゃんを、ぎこちない手つきでよしよしと撫でる。
「頑張ったね、お疲れさま」
「うううあゆ先輩ーーっ、大好きーー!」
続いて部屋に入ってきた楓くんが、「ごめんね」と言いたげな笑顔を向けてきた。
いやいや、むしろ今回ばかりはありがたいよ。
ルリちゃんが帰ってきてくれてよかった。
あのまま観月くんとふたりだったら、気まずいし……。
そう思いながらも、どこか寂しい気持ちがするのは、きっと気のせい。
「ルリ。今日はあんまり時間ないんだから、そろそろあゆちゃんから離れようか」
しばらくすると、楓くんからそんな声がかかり。