悪女は果てない愛に抱かれる
つまり形式的に言えば、お父さんと安哉くんの住む家にわたしが居候している状態。

正真正銘血の繋がった家族だというのに、なんともおかしなハナシである。


このような理由から、わたしが安哉くんの妹だとバレる心配はナイに等しいのに
一応家のことを考えて学校では極力人と関わらないようにしている。


加えて、安哉くんの召使いまでこなしているわたしって……。

ああ、なんていい子なんだろう……ヨシヨシ。


滑稽にも自分で自分を慰めながら繁華街の角を曲がったときだった。


「やめて! 離して……っ!」


そんな叫びと同時に目に飛び込んできたのは、大きな男性に腕を掴まれている女の子。


繁華街で白昼堂々しつこくナンパを仕掛けるなんてろくな人間じゃない。


「あの〜、その子嫌がってますよ」


声を掛ければ、相手の視線がギロッとこちらにスライドする。
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