悪女は果てない愛に抱かれる
しぶしぶといった様子で離れたルリちゃんが、申し訳なさそうに口を開いた。
「それがね、さっき急遽パパが海外から帰ってきたって連絡があって。今夜は家族でディナーすることになったの」
「え……海外から……っ? それは早く行かなきゃだねっ?」
「あたしが強引に誘ったのに本当にごめんね! お詫びに、すっごい美味しいスイーツ買ってきたから食べてっ」
ルリちゃんはそう言いながら、楓くんが持っていた箱を奪ってテーブルにどんっ、と置いた。
繁華街で有名なスイーツ店のロゴが入っている。
「あ、ありがとうだけど、気を遣わなくてよかったのに……」
「元々あゆ先輩と一緒に食べようって思って予約してたやつだから大丈夫! あ、保冷剤入れてもらってないから、ここで食べていってね。シュークリーム溶けちゃうから早めに!」
それじゃあね!と言いながら、ルリちゃんは部屋を出ていった。