悪女は果てない愛に抱かれる

それに続き、楓くんもいなくなった。


……あ、そっか!

ふたりは兄妹だから、楓くんも一緒にディナーなわけだ。

ということは、わたしは観月くんとふたり……。


おそるおそる、さっきまで彼がいた場所に視線を移す。

あれ、いない。


立ち上がって部屋全体を見渡すと、部屋の対角にあるソファに座ってさっきの分厚い本を読んでいた。


完全にひとりの世界だ。

わたしをないものとして扱っている。


そのほうが都合がいい。
ルリちゃんはいないわけだし、ここに長居する理由もない。

それに、観月くんだってさっさと帰れよと思っているに違いない。


早いところシュークリームをいただいて退室しよう。


そう思って急いで箱を開ければ、びっくり。

なかなか大きいサイズのシュークリームが、二つ入っているではないか。


きっとルリちゃんの分だ。
わたしと一緒に食べる予定だったと言っていたし……。
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