悪女は果てない愛に抱かれる
独り占めもいいけど、この美味しさを誰かと分かち合いたいな……なんて。
どうやら、シュークリームの甘さで頭までとろけてしまったみたい。
おもむろに立ち上がり、そろりそろりと観月くんの元へ足を運んだ。
途中で我に返って、一旦停止。
わたしたちの中間地点はとうに超えてしまっていて、引き返すにはおかしい距離だ。
「……なんの用」
冷や汗を垂らしているところに、本に視線を落としたままの観月くんから声がかかる。
「シュークリームを、食べませんか」
「………」
「ルリちゃんが買ってきてくれたんですけど、二つ入ってて、ひとりじゃ食べ切れなくて。ものすごく美味しかったので、おすそ分けをと……」
少し間をおいて、小さなため息が返ってきた。
「ここ座りな」
「えっ」
「俺の隣。早く」
「はっ、はい!」