悪女は果てない愛に抱かれる
圧力に押されて足を踏み出すも、わたしの動作はロボットのようにぎこちなかった。
観月くんのいる大きなソファには、もうひとり、いやふたりは座れる十分な広さがある。
だけど厄介なことに、観月くんはそのど真ん中に座っている。
まるで玉座だ。
端にズレてくれる様子もないので、酸欠になりかけながら近づいた。
「隣、失礼します……」
「ああ」
「……、座り、ました」
「はあ、見たらわかるけど」
「ええと……なぜ、わたしに、座れと」
「立っては食えないだろソレ」
「え?」
ソレ、とは、シュークリームのことらしい。
わたしは観月くんにおすそ分けをするために持ってきたんだけど……あれれ。
「わざわざあっちに戻るのも面倒だろうから、ここで食えって言ったんだよ」
「あ〜……、なるほど……?」
納得してみたはいいけれど。
……うーんと、……てことは。